7月24日付日本経済新聞の内容を、もう少し詳しくまとめてみました。
転移を防ぐ為に今までは
かつて早期の乳がん患者さんには、転移を防ぐ為に脇の下のリンパ節を全て切り取る手術(リンパ節郭清)が行われていました。
ただ、リンパ節郭清を行ってもリンパ節に転移が見つからない場合もあり、その一方で脇の下のリンパ節を取ると腕が上がらない、しびれやむくみがでるなどの問題もありました。
近年ではこのようなリスクを回避するため、リンパ節への転移をピンポイントで調べる「センチネルリンパ節生検」という方法が取られています。
センチネルリンパ節は見張りリンパ節とも言われ、乳がんのがん細胞が最初に流れ着くリンパ節です。
センチネルリンパ節生検は、乳がんの手術と同時に行われ迅速に診断されるのが一般的ですが、手術前に外来・短期入院で行われる事もあります。
ここをピンポイントに切除・検査すれば良いわけですが、やはり手術を行うのに代わりはなく、後遺症の問題はあったわけです。
リンパ浮腫
手術した側の腕や手がむくむ「リンパ浮腫」はむくんでも痛みがないのが特徴です。
腕や手が動かしにくい、重たい感じかする。腫れぼったい、皮膚が硬くなる、静脈の見え方に左右差がある、皮膚を押すとへこみ、戻りが悪い…などの症状がある場合はリンパ浮腫の可能性があります。
リンパ浮腫は日常生活でのケアで予防と治療ができます。
リンパ浮腫は術後すぐ発症する場合も有りますが、10年たって発症する患者さんもいるようです。
このように、リンパ節を切除するという事は、乳がんの手術後の生活の質に大きく影響があるものでした。
手術せずに画像で解析
今回、大阪急性期・総合医療センター(大阪市)のチームが乳がんが脇の下のリンパ節に転移しているかどうかを、手術せず診断する手法を開発したと発表しました。
コンピューター断層撮影装置(CT)と磁気共鳴画像装置(MRI)を組み合わせた画像解析でわかるようです。
乳がん摘出前に腫瘍近くにCT用の造影剤を注射し、リンパ管を通じて脇の下のリンパ節に取り込ませ、センチネルリンパ節の場所を特定。
さらにMRI用造影剤も注射する事で、MRI用造影剤ががん転移場所には取り込まれない性質を利用し、二つの画像を合わせて分析する事で転移の有無を判断できるというものです。
負担軽減が期待される
乳腺外科の元村主任部長似寄ると、100%近い正診率が得られており、同センターではすでにこの手法で転移がないと診断した場合は手術をしない(センチネルリンパ節生検のことと思われます)臨床試験を開始しているようで、患者さんの負担が軽減する事が期待される、とありました。
この手法が早く確立し、広く浸透すれば良いですね。