「腸内環境を制御する抗菌ペプチド α-defensinと疾病」を聞いてきました。
お話は北海道大学大学院 先端生命科学研究院 細胞生物科学分野 中村 公則先生です。
私たちは最近と共に生きている
腸内細菌叢はヒトの腸管内に生息し、その数100兆個1,000種類(ヒトの体細胞は37兆個)総遺伝子数はヒト遺伝子のおよそ25倍以上。重さは数㎏と脳に匹敵しどの臓器よりも重く、第三の臓器と言われています。
先日もコラムにしましたが(→こちら)新生児は産道を通過する際、帝王切開の場合は重乳などを介して腸内細菌を得ます。
周囲環境から受けとる菌もあるようです。親子、兄弟でも構成の類似度は他人と類似度と変わりなくバラバラだということです。
食べ物、年齢、疾患との関連
アフリカの田舎での高食物繊維・低カロリー食の民族は腸内はBacteroidetesに属する細菌が優勢、イタリアでの低食物繊維・高カロリー食の人々はFirmicutesに属する細菌がという統計結果があるそうです。
肥満体重者の腸内細菌叢を正常体重者と比較するとFirmicutes>Bacteroidetesということもわかっています。
年齢との関連は、高齢になるにつれビフィズス菌は減少、大腸菌・ウエルシュ菌と言った物が増加していきます。
クローン病及び潰瘍性大腸炎患者は先程のFirmicutesもBacteroidetesも両方少ないとわかっています。
近年、肥満症、脂肪肝園、クローン病、潰瘍性大腸炎、肝硬変症、認知症、自閉症…などとの関係が示唆されています。
α-ディフェンシンという物質
小腸陰窩基底部にあるPaneth細胞は細菌感染に応答して抗菌ペプチドα-ディフェンシンを分泌し腸管の自然免疫に貢献しています。
このα-ディフェンシンは病原菌は殺すが常在菌は生かすという「選択的殺菌活性」を持っているという実験結果があります。
また、ネズミの実験で高脂肪食を連続摂取し肥満となったネズミはPaneth細胞が機能異常となりα-ディフェンシン分泌能が低下してしまったという結果を得ました。
このα-ディフェンシンの低下により腸内細菌叢が破綻、腸管粘膜免疫が狂って疾患に繋がるのではないだろうか、というのが先生の考えです。
これから研究が進み、病気の治療にPaneth細胞やα-ディフェンシンが重要な役割を持っていくのかもしれません。
腸内細菌叢を整えることは疾患や肥満に良い影響があり、やはり食物繊維は重要、高脂肪食は身体へ悪影響あるということを改めて感じました。